九月が永遠に続けば 沼田まほかる
人の心の機微に、これほどまでに適格な言葉を与え、そこにある人間の哀しみや宿命、どうしようもなさを具体的にあぶりだすことができる作家は他にいるだろうか。
この作品は沼田まほかるの処女作であると、読後の解説の中で知った。
物語は、佐知子と愛人の、情事の余韻から始まる。
精神科医である佐知子の夫は、凄惨な事件で精神を壊した女の元へと去った。
夫に想いを残したまま一人で息子を育てる佐知子に訪れた情事、そんな中で突然失踪した息子。
手探りで闇を這う中、彼女を取り巻く人たちの、想像を超えた関係性が静かに露呈していく。
この小説は私たちに物語の驚きの顛末を読ませ、同時に人間そのもののやりきれない姿を感じさせる、とても面白いものだった。