1リットルの涙 木藤亜也
「1リットルの涙」は、14歳で脊髄小脳変性症という進行性の病に侵された木藤亜也さんが、14歳から20歳までにつづった日記を本にしたものである。
人が何かを「頑張れる」のは、その頑張りの先にほんのわずかにでも希望の光があるからであって、頑張ることが美徳だから頑張る、という動機の頑張りは続かないことを、ある程度の人生経験を積めば誰しもが知るところではないか。
亜也さんは、頑張ることの先に希望を見つけ、その希望は病気によって叶わず、それでも日々の中に小さな喜びや嬉しさを感じ、そのことがまた次の頑張りにつながる。
彼女の頑張りは、私たちに、ときに無意味なはずだった「頑張ること」がもつ、命の輝きを見せてくれたように思う。
今のこの時、この一日は、未来の何か・・・。例えば仕事の成就や成功、成長につながっているように見えて、この瞬間は結局、この瞬間そのものでしかないのではないか。今日がやがて思い出になり、記憶になり、ついには思い出すこともなくなるように、今ここで起こっている出来事はこの瞬間にしか抱きとめることができない。
だから今を大切にと人はいうのだと思う。
読みながら、そんなことを改めて考えさせられた。
聡明で感性の豊かな彼女の書く言葉は、どんなに巧いといわれる文章より、心に響いてくる。彼女の本はこれからもずっと読む人の命に何等かの影響を与えていく。そういう意味でも、彼女はこれからもずっと生き続けるのだと思う。