行動することが生きることである 宇野千代
宇野千代の本をはじめて読んだ。
まだ、読み終わっていないのに、書きたくなってしまった。
とにかく、文章が生きている。
彼女の文章に、文章読本にあるようなルールはない。
ですます調とである調の混在。文章の調子も途中でよく変わる。
そんなことはどうでもいいと思えるほど、彼女の文章は間違いなく彼女自身だし、なんというか、生身の彼女よりも、彼女そのものなのではないかと思う。
「頭で考えるだけのことは、何もしないのと同じこと。手を動かすことによって考えるのである」
この一文は衝撃だった。
私は今まで、頭で考えたことを具体的に表現するために文章があるものだと思っていた。つまり文章を書くということは、自分自身が考えたことを形にする手段であって、まずなにより「考えたこと」ありき、だと思っていた。
「手を動かすことによって考えるのである」
今こうして手を動かしていると確かに、考えるが早いか書くが早いか、書くというこの行為自体が「考える」という現象を引き起こしている、という実感がある。
それは今まで曲がりなりにも文章を書いてきた中で感じていることではあったけれど、こうまではっきりとした言葉で自覚したことはなかった。
この言葉は私にトンデモない勇気を与えた。
とにかく、書きさえすればいい。
考えてないで、手を動かせばいい。
そうすれば頭が動いて、ただぼんやりと思考することでは動かせなかった脳の一部が動いて、私は書くという行為をきちんと行うことができる。
まだこの本を読み切ってはいないけど、彼女の底知れないスゴさにとにかく驚いている。